名著『生きる意味』(上田紀行)はミニマリストのバイブルにきっとなる。

ミニマリスト 買ったもの

物をどんどん捨ててゆき、そして、捨てるものがなくなってくるとポッカリと心に穴があいているような空虚感が襲ってくる。そんなことはないでしょうか。

そして、その原因は「物がないこと」にあると考えて、また物をたくさん抱える生活に戻ったり(リバウンド)。
あるいは、まだ「物があること」に空虚感の原因があると考えて、腹をすかせたライオンのように捨てるものがないかと部屋をウロウロしたりしていないでしょうか。

私はリバウンドもウロウロも両方したことがあります。

物の「ある」「なし」によっては埋めようのない空虚感。
わたしは直感的にこの空虚感を放置するのは危険だと思っていました。
たとえば、そこに何かがつけこんでくるのではないか。
新興宗教やギャンブル、酒、そういった依存性のあるものなどが。


その空虚感を安全に埋めて凌ぐ方法は、心から楽しめる趣味くらいなものではないか。
そういうふうに思っていたときに出会ったのが、上田紀行『生きる意味』(岩波新書)でした。

まずは周辺情報から

奥さんはNHKアナウンサー。

著者の上田紀行さんは、現在東京工業大学の教授(専門は文化人類学)。一般の人には馴染みのない先生ですが、NHKアナウンサーの武内陶子さんの旦那さん、といえば少しはわかりやすいかもしれない。春風亭小朝さんの従兄弟でもいらっしゃるそうです。

入試頻出!!

この本には、
学問にも様々なあり方がある。(中略)一見儲かりそうにない学問であっても、私たちが人生の危機に陥ったときに、一生に一度私たちを人生の深い次元から救ってくれるような学問もある。生きる意味に惑ってしまったときに、その道を力強く指し示してくれる学問もある。そうした「人類の叡智」の詰まった学問を切り捨てて日々儲かる学問だけ残せば、私たちの「生きる意味の病」はますます深刻化することになるだろう(p202)
 これが大学の先生がたの琴線にも触れたのか、2006年あたりから上田紀行さんの文章が入試に頻出するようになったそう。

入試に出るといっても、大学の偉いセンセにありがちな、難しい感じや持って回った書き方はありません。とてもシンプルでわかりやすい文章です。

内容

経済成長のために犠牲にしてきたツケが、経済成長のない時代に噴出した

「自分の本当にほしいもの」を欲しがる。「本当に自分が生きたい人生」を生きる。これは人間の基本的な欲求なのに、私たちはこれまで「他の人がほしいもの」=「自分がほしいもの」という風に歪め、抑圧してきた。
たとえば、職業については、自分が本当になりたい職よりも、他の人が羨む「いい」企業に入りたいと望んだり、大学進学も「自分が行きたいか」よりも、「偏差値が高いか」のほうが重視されるといったふうに。

自分の頭や感性を使わなくても、社会で求められていそうな線を狙っていけば、(経済的に)幸せになれたからだ。

けれども、経済成長が止まり、もはや経済的な利得が得られるかは怪しくなったにもかかわらず、「他の人がほしい」=「自分のほしいもの」と考え続けることしかできない。なぜなら、自分の感性は二の次にして放置され、未開発なままだから。
そうして、結局「他者の目をうかがいながら生きる」抑圧だけが残ることになる。これが「生きづらさ」の原因になっている。

他人に嫌われたくないので透明化する。そして本当に透明になる

自分の本音を隠し、「他の人がどう考え感じているか」を考えつづけ、自分の個性を脱色して「透明化」した結果、自分の存在感がわからなくなってしまうという危機に瀕してくる。
交換可能でどこにでもいそうな自分に尊厳など持てるはずもない。
自分のかけがえのなさを感じることなどできず、「生きる意味」がわからなくなってしまう。

グローバル化で抑圧は加速される

社会のシステムは未だにこの「他の人がほしいもの」=「自分がほしいもの」モデルで動いており、グローバル化はますますそれを加速させる。
グローバル化は、日本の恥の文化(他者の視線を気にして生きる文化)を破壊してくれるようにも思えるが実は違う。
なぜなら、グローバル化の中で生き残るには、世界からの投資を集めねばならず、それはいかに自分が「他人の欲しいものを持っているのか」が重視されるから。つまり「他者の目」をうかがわねば生き残れないからだ。
そして、このグローバル化する世界では、人はますます「生きる意味」を喪失していく。
日本では、恥の文化と相まって更にひどいことになる。

では、どうやって自分の「生きる意味」を手に入れるのか

どのようにして自分の生きる意味を手に入れ、人生を自分のものたらしめるのか。
これこそ読者が一番知りたいところでしょうけど、それは『生きる意味』(岩波新書)でご確認を。

少しだけ触ると、「自分のワクワクが大事」ということ。
本書では『釣りバカ日誌』のハマちゃんを例にあげている。
ハマちゃんはうだつの上がらないサラリーマンだが、釣りさえあれば、出世しなかろうと構わない。相手が社長だろうとタメ口で構わない。ハマちゃん独自の生きる意味に支えられていて輝いている。
そして、重要なのは、小さなワクワクに耳を傾けて感性を磨くこと。そうするうちにワクワクは、「生きる意味」は、成長していく。

『生きる意味』がミニマリストのバイブルとなる理由

ミニマリストは「他者からの目」を少し脱した人だから

ミニマリストは、他者から見ると、かなり変わり者。普通じゃない。病気とすら思われます。
けれどもそれでも構わないのがミニマリスト。
他人の目よりも自分の「持ちたくない」感性が大事なのです。

ミニマリストになっても何か「足りない」のは、きっと

ミニマリストは、ここだけ見れば「抑圧」から脱しているかに見えます。
しかしどうでしょう。心の空虚感は払拭されないのではないでしょうか。
何かが足りない、と感じているのではないでしょうか。
自分探しの旅に出たくなるのではないでしょうか。
その空虚感こそ「生きる意味」の不存在なのではないでしょうか。

冒頭で私は断捨離したあとの空虚感を放置するのは危険と考えていた、と書きました。
私がなぜ第一に宗教の侵入を恐れたのか、はっきりわかります。
宗教により「教祖などの他者の生きる意味」を押し付けられるのではないか、と無意識に感じていたのでしょう。
ミニマリストになろうと断捨離することで得られた、数少ない自分の感性が奪われることを恐れたのだと思います。

『生きる意味』はきっと役に立つ

ただ、この空虚感は悪い空虚感ではないと思います。
物を捨ててきた道を引き返す必要もないでしょう。
ただモノを捨てただけで「生きる意味」が手に入る、なんてほど甘くないというだけです。

自分の感性を使い、成長させて、自分の生きる意味を自分で見つける。
この作業をするだけです。
その作業に『生きる意味』はきっと役に立つはずです。
そして、ミニマリストは自分の生きる意味を早晩見つけられると思います。
なぜならすでに一つ、「持ちたくない」という自分の感性を手にしているのだから。

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